Reading Review
ヤクザときどきピアノ
きみの音楽のチャクラは開いているか。
ヤクザがときどきピアノを弾く物語…ではなく、裏社会専門のライターが入稿明けにABBAの映画”Dancing Queen”を聞いて「俺もピアノでDancing Queenをを弾きたい!」と立ち上がる話。
ちなみにこの本、書店の「ヤクザ・裏社会」の書棚にありがち。
驚くべきは著者の行動力と登場人物のキャラの強さ。
50代の著者(男性)がピアノ教室を探すも、なかなか見つからない。
ようやく見つけた先生がレイコ先生。
「練習すれば弾けない曲はありません」
「本当に、毎日3時間練習したら、カンパネラだって弾けます」
「体に動作を叩き込もうとする時、点滴の針を太くしても意味がないのよ。(中略)短い時間でも、毎日欠かさず練習するのがいい」
こう語るレイコ先生。ギターにも通ずるところがあると思いませんか?
ピアノの世界を外から見てみると美麗で優雅に見えがちですが、実際の現場は泥臭く、どちらかといえば昭和のスポ根な雰囲気。
そんなレイコ先生の指導のもと、ピアノの練習に励む著者。
裏社会専門のライターという背景もあって、著者が
「最近ピアノ始めたんですよ」
と、ヤクザ組織の親分に語ったところ、
「お前、ヤクやってねぇよな?」
と調べを入れられる始末。
そんな著者とレイコ先生の二人三脚でDancing Queenを通しで弾けるようになるまでの物語。
ギタリストが読んでもキラリと光る文書が見つかる良書です。
特に楽器を始めた時の悩みはギターもピアノも一緒なんだなって発見もありました。
私は単行本で読みましたが、2025年に文庫・増強版も発売されました。
こちらでは著者とレイコ先生のその後が語られていて、解説も充実しているので今から読むのだったら、こちらが良いでしょう。
レッスンは冒険であり、レジスタンスだ。
ピアノは人生に抗うための武器になる。
俺は反逆する。
残酷で理不尽な世の中を、楽しんで死ぬ。
ピアノを習い始めた人がこんな事思うでしょうか?それくらい熱い思いを持った著者の冒険譚を、ぜひ。

